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いわて探訪
−早池峰山−







結婚するずっと以前に、東京から早池峰山(標高1917m)に登るために夜通し東北自動車道を走り続け、岩手県の大迫町に来ました。早池峰山の特別天然記念物、エーデルワイス(早池峰ウスユキソウ)を一目見るためです。


早池峰山に登る前日、ウォーミングアップで向かいにある薬師岳(1645m)に登りました。
早池峰山の南に対峙する薬師岳は、早池峰山の賑やかさに比べて人が少なく静かな山です。
というより私達が登ったときは、他の登山者は、誰もいませんでした。
私は、5人グループの先頭を歩いていたのですが、ブナ帯からダケカンバやアオモリトドマツ林の亜高山帯に入った頃、汗を拭うオデコを蚊に刺されてしまいました。


一匹に刺されたら運のつき、匂いで他の蚊を呼んだのか何匹も額に蚊が止まりに来るのです。
払っても払っても額に飛んで来たのですが、森林限界を超え傾斜が増し巨岩を乗り越して登る頃にやっと蚊の襲撃が収まりました。一緒に登った5人のうち蚊に刺されたのは先頭を歩いていた私だけで、しかも皆の分を背負っていまったのか5箇所も額を刺されてしまったのです。
蚊に刺されたので、痒(かゆ)くてうっとうしく、どんよりと曇りの日で霧に覆われた山頂からは、早池峰の峰々や北上山地の山々は望めません。もやもやとした気分の中、ハイマツの緑にハクサンシャクナゲの白い花が、静かに佇んでいたのだけがとても印象的でした。

早池峰山に登る翌朝目を覚ますのですが、目が開きません。
起きて開きにくい目で鏡を見てみると、瞼(まぶた)が腫れあがり、鼻の付け根の幅が2倍になっていました。
オデコももっこりして、デコッパチのようです。目が腫れて開かなく見えないと、とても人前に出れる形相ではなかったので早池峰山の登山は泣く泣く諦めました。

前日の薬師岳で、オデコに5箇所刺された蚊の毒が寝ている間にまわり顔や目が腫れてしまったようです。
額から目へ、目から鼻へ毒が下りてきたのです。
後ろ髪を引かれる思いで、早池峰山に登る仲間を見送り、腫れてしまった酷い顔で大迫町の総合病院へ行きました。毒性のある蚊のようで、地元の人は免疫があるので刺されてもこんなに腫れないらしいのです。病院で処方してもらった毒を出す利尿作用のある薬を飲んで、東京に帰る日にはどうにか顔の腫れは引きました。


                            

早池峰山は、こんな訳で登ることが出来ずに、10年以上たった今でも早池峰山への恋心が冷めません。
岩手に腰を下ろした現在、いつでも行けるのだという気持ちと日々忙しくラブコールを送るだけでしばらく足が向けそうにありません。エーデルワイスもすぐに見てしまわないで、大切にその姿を心の中で描いているのもいいのかもしれないと、最近は思っています。それにしても、薬師岳は、蚊に刺されてあまりいい思い出はないけれど東北の静けさを満喫出来る大人の味わいのある山でしたなあ。












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